編集部ブログ

5/14(金) 02:49
気になる芝の状態
5月15日に2009-10シーズンのFAカップ決勝、チェルシーvsポーツマス戦が行われる。プレミアリーグを制した前者と、財政難に苦しみ最下位に終わった後者とでは置かれた状況が大きく異なるものの、共通して優勝への強い意気込みを見せている。シーズンを締めくくる一戦として、最高の戦いが繰り広げられるだろう。

しかし、そんな期待高まる大一番を前に、ひとつだけ気掛かりなことがある。会場となるウェンブリー・スタジアムの芝の状態だ。

これまで「サッカーの聖地」として誰もが憧れる夢舞台だったウェンブリーだが、2007年に新装オープンして以降、選手や監督からの評判はかなり悪い。その原因は「ピッチの備え付けを後回しにしてしまった」と関係者が語る劣悪な芝で、これまでにもマンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソン監督やアーセナルのアルセーヌ・ヴェンゲル監督が幾度となく苦言を呈してきた。

4月11日に行われたFAカップ準決勝のポーツマスvsトッテナム戦でも、その劣悪な芝によって大きな事件が起こっている。

両者スコアレスで迎えた延長前半、ポーツマスのマイケル・ブラウンがFKから緩やかな浮き球のパスをゴール前に供給。これをケヴィン・プリンス・ボアテングが頭で折り返すと、ボールはフレデリック・ピキオンヌとトッテナムのマイケル・ドーソンの目前へこぼれた。両者の体勢はほぼ互角だったが、ドーソンの足元の芝が大きく剥れ、転倒を誘発。その隙にピキオンヌがシュートを流し込み、結果的にこれが決勝点となった。

「あんなバカげたピッチでプレーしなければならないなんて茶番に等しい」

試合翌日、トッテナムのハリー・レドナップ監督は怒りをあらわにした。前日に行われたチェルシーvsアストン・ヴィラ戦でも選手はピッチの至る所で足を滑らせており、2試合を通じての転倒シーンは確認出来ただけで優に20回を超えた。

新ウェンブリーはオープンから3年の間に10回も芝を張り替えてきたが、改善の兆しはほとんどない。1回の作業につき10万ポンド(約1450万円)もの費用を要しながら効果が出ないのだ。この分では、決勝を前に実施された11回目の張り替えの効果も期待出来ないのではないだろうか。

カルロ・アンチェロッティ監督の就任1年目で2冠を狙うチェルシーと、降格は決まったがサポーターのために是が非でも優勝したいポーツマス。両者にとって同じぐらい重要なこの一戦を“芝のいたずら”が台無しにしてしまわなければいいのだが……。

(小松/ワールドサッカーキング編集部)