7/1(金) 10:39
ロナウジーニョの今
開幕時点でミランの司令塔にして“顔”だったロナウジーニョ。昨年末でイタリアを離れ、母国ブラジルのフラメンゴに移籍した彼は今どのような日々を送っているのだろうか。
■復活を遂げたクラック
リオデジャネイロのエンジェンヨン・スタジアムで5月1日、リオ州選手権決勝のフラメンゴvsヴァスコ・ダ・ガマの一戦が行われ、PK戦を制したフラメンゴが前期・後期の完全優勝を果たし、通算32回目の栄冠を勝ち取った。
フラメンゴのヴァンデルレイ・ルシェンブルゴ監督は、今年に入ってから優勝に最も貢献したプレーヤーとして“ガウショ”ことロナウジーニョの名前を挙げた。
フラメンゴでは就任2年目のルシェンブルゴ監督が試行錯誤のチーム作りを続けてきたが、ロナウジーニョやチアゴ・ネヴェスら中盤の選手を補強してようやく形となった。
古巣グレミオからは“裏切り者”とののしられるロナウジーニョだが、フラメンゴのサポーターには愛されている。2月27日に行われたリオ州選手権前期(グアナバラカップ)決勝のボア・ビスタ戦で、ロナウジーニョはFKで決勝点を奪い優勝に貢献。ファンの期待に応えるとともに、ブラジル復帰後初のタイトルを獲得した。
その後もロナウジーニョはチームを牽引し、リオ州選手権制覇の立役者となった。多くのゴールを奪ったわけではないが、相手の作戦や試合状況に応じてポジションを変えて攻撃の起点となりゴールを演出するパスを出した。そんなパフォーマンスが評価され、リオスポーツ連盟の最優秀FWにも選出された。
フラメンゴでの活躍は、帰国時点では散々なものだった彼自身のブラジル国内での評価を再び押し上げた。試合を重ねるごとに、彼は名実ともにチームの中心選手として扱われるようになっていった。フラメンゴでは背番号「10」のユニフォームが3月だけで6万4000枚も売れた。同クラブのグッズ卸売業者によると、ロナウジーニョの関連グッズ販売のロイヤルティーとしてクラブ側は40万レアル(約2000万円)の収益を得たという。
その一方で、月給160万レアル(約8000万円)というロナウジーニョの高額年俸に対するやっかみの声も上がった。この金額は今年1月に女性初のブラジル大統領に就任したジルマ・ロウゼフ大統領の60倍であり、ブラジル国営石油会社ペトロブラス総裁の給料の24倍、ソニー社長のハワード・ストリンガー氏の給料の2.3倍に相当することが報じられ、「そこまでの大金を払う価値のある選手なのか?」との議論が各メディアで繰り返されている。
とは言え、現在のところロナウジーニョに関する報道は、「本業」のサッカーに関するものがほとんどだ。各メディアの論調も、帰国直後の「使い物になるかどうか怪しいもの」といったものから、フラメンゴに与えた功績を称えるものへと変わりつつある。
■セレソン復帰の可能性
フラメンゴでまずまずのパフォーマンスを見せるロナウジーニョだが、セレソン復帰の可能性は見えてこない。ブラジル代表のマノ・メネゼス監督は、「代表でプレーする権利を失った選手は誰一人いない」と明言している。それはロナウジーニョだけでなく、最近はケガで代表から遠ざかっているカカーやアドリアーノについても同様で、「見捨ててはいない」というメッセージを示すことで、彼らの奮起を促しているように見える。
しかし、選手、コーチ、監督時代を含めて4度の世界一を経験しているマリオ・ザガロ元ブラジル代表監督は、「マノがフラメンゴの10番をセレソンに呼ぶことはない」と断言する。ザガロは3年後の自国開催のワールドカップに向けたフォーラムの中でセレソンについて多くを語り、その中でロナウジーニョについてこう分析している。
「バルセロナ時代の彼は並外れた身体能力と高度な技術を発揮していた。当時の彼はあらゆる称号を獲得したが、ミランに移籍した時点で、かつての輝きは過去のものになっていた。ミランでレギュラーポジションを失った彼を、ルシェンブルゴ監督はバルサ時代のポジションでプレーさせている。だが、ロナウジーニョはもうピッチ全面で動き回ることのできる選手ではない。“30メートルのエリア”だけで輝く選手なんだ。だが、フラメンゴではそれで良くても、セレソンとなると別だ。今のセレソンでは組織的なプレーをこなすための運動量が不可欠だ。ロナウジーニョの才能を否定するつもりは全くない。だが、彼がセレソンの司令塔としてプレーする時期はもう過ぎ去ってしまった」
今のセレソンでは全員がハードワークを求められる。ロナウジーニョはその中盤でプレーするだけのスタミナがない。フラメンゴではFWとして起用されることで前線の狭いエリアだけでプレーし、攻撃に集中できる。ただ、その起用法でいくら活躍しても、セレソン復帰には近付かないということだ。フラメンゴのファンはロナウジーニョの活躍に熱狂し、自分たちの背番号10を代表に送り込もうとしているが、その実現は相当難しいものであるようだ。
(記事提供:CALCiO2002)