2/23(木) 11:00
カルチョメルカートの表と裏C
◇エルナネスとクローゼの成功がラツィオを本田に執着させた
ラツィオは本田にこだわりすぎた。
放出する気のないCSKAにいつまでも付き合うことで貴重な時間を無駄にして、十分な資金があったにもかかわらず、有効な補強ができなかったのである。
ニウマール、ルーカス・ポドルスキ(ケルン)、マルコ・パローロ(チェゼーナ)、そしてアンジェロ・パロンボ(サンプドリア→インテル)といった獲得候補の中には、エディ・レーヤ監督がフロントに要請した名前もあったはずだ。
メルカート終了の翌日、スタディオ・オリンピコで首位のミランを2-0で破った試合後、レーヤ監督はフロントの不始末をなじった。
「ロティート会長から大型補強を約束され、私はそうなるものだと期待していた。ところが、メルカートが終了してみれば前半戦より戦力が落ちている。中盤の選手層の薄さは深刻だよ」
CSKAの態度を見誤ったのは、ラツィオ首脳陣の大きな過ちだった。だが、本田に固執したのは、彼にそれだけ大きな期待を寄せていたからだとも言える。
ラツィオは本田をセリエAのスターにする計画で準備を進めていた。クラブが破綻危機に陥り、ロティートが新たなオーナーになってから、ラツィオはかつての金満体質に別れを告げ、プロヴィンチャのクラブの予算規模でのやりくりを続けてきた。そんな忍耐の年月を経て、ようやく選手補強にそれなりの予算を割けるようになったのは、ここ2年ほどのこと。そこでエルナネス、ミロスラフ・クローゼといった“ビッグネーム”を獲得したことが、チームの成績にダイレクトに反映した。そんな状況だったからこそ、“ケチ”で有名なロティート会長も今回の大型投資にゴーサインを出したのである。
レーヤ監督も、中盤の指揮をエルナネスと本田に任せるような戦術を考えていた。最近はトンマーゾ・ロッキとクローゼを2トップで起用する4-4-2を採用しているが、ラツィオの本来のシステムは4-2-3-1である。ここでカギとなるのが、ボールを前線に運び、クローゼにラストパスを送る3人の攻撃的MFの出来。エルナネスを中心に、右にアルバロ・ゴンザレス、左にジブリル・シセを置く配置は、序盤戦は機能していた。
だが、シーズンが進むにつれて、シセが脱落する。左サイドでカウンターの起点となり、縦へのスピードを生かした突破からチャンスメーカーとして機能していたにもかかわらず、得点が伸びなかったことでメディアに批判された。順調にゴールを量産するクローゼと比較されたことにも苦しんだようだ。結局、シセはクラブ側と話し合った上で、わずか半年での退団を選択する。
この時点で、「3」の左サイドをこなす主力級の選手を補強する必要が生まれた。昨シーズンまでこのポジションを務めたステーファノ・マウリは長期離脱中で、まだ復帰の目処が立たない。レーヤの希望は、このポジションで使える上、エルナネス欠場時にその代役を務められる選手だった。そうして浮上したのが本田だったのである。
フロントはシセが望むままに退団を許可した。そして、その代役となる選手の獲得は果たせなかった。普段は温厚なレーヤが怒りを爆発させたのは、こんな経緯があったからだ。今は
ベテランのロッキが好調だから結果が出ているが、レーヤからすれば4-4-2は攻守のバランスが悪い。クローゼ、エルナネスという2大エースの力を最大限に引き出すためにも、4-2-3-1で戦いたいのだ。だが、中盤に故障者が続出し、シセも抜けた。今後は苦しいやりくりを強いられるはずだ。
(記事提供:CALCiO2002)