2/24(金) 11:00
カルチョメルカートの表と裏D
◇カンドレーヴァの獲得は「本田を待ちながら」の意向
ラツィオの目論みが外れたのと同時に、本田の目論みも外れた。ラツィオ以上に大きな損をしたのは本田であると言える。
バルセロナでリハビリ中だった彼は、いつでもローマに飛べるように、数日間プライベートジェットをスタンバイさせていたそうだ。ラツィオ移籍が実現すれば、背番号10が与えられる予定だった。
かつてロベルト・マンチーニやエルナン・クレスポが付けた栄光のナンバーである。本田は、ラツィオが考えている200万ユーロ(約2億円)の年俸と50万ユーロ(約5000万円)の出来高という条件を受け入れ、2016年までの4年半の契約にサインするつもりであることを明らかにしていた。
ターレがモスクワを訪問した後、イタリアの新聞には「僕はラツィオを望んでいる」という本田の発言が載った。最後まで、移籍交渉が成立するように努力し続けたのも彼である。
本田のラツィオ移籍が正式に発表されるのを待っていた在イタリア日本人報道関係者が大いに落胆したのは言うまでもない。
1月27日から29日にかけての週末、ラツィオがいつも新加入選手のメディカルチェックを行うことになっている『パイデイア』病院の外では数多くの日本人記者が待機していた。
31日、ローマから約30キロ北に離れたラツィオのトレーニングセンター、フォルメッロで行われたレーヤ監督の記者会見にも大勢の日本人が押し寄せたが、その日の明け方に移籍交渉が破談となっていたというニュースは、その時点ではまだ出回っていなかったのだ。
ターレは、非常に落胆した表情でCSKAのやり方に遺憾の意を述べた後、今後の動きについて注目すべき発言をしている。
「シーズン終了後に、改めて本田を獲得するチャンスがあると思っている。本人がラツィオに来たがっているんだから、可能性はある」
ラツィオが本田の獲得にまだ執着していることは、カンドレーヴァの獲得からもうかがえる。
以前ウディネーゼやユヴェントスでプレーし、イタリア代表歴もあるカンドレーヴァだが、今回はレンタルでの獲得。4-2-3-1の「3」における左サイドか中央でプレーする選手だが、これはまさに本田のポジションだ。そのカンドレーヴァを半年間のレンタルで獲得したことは、「本田を待ちながら」というロティートとターレの意向が反映された結果だろう。
ロティートには戦力面以外にも本田に期待することがある。
彼はラツィオを、イタリア国内だけでなく、国外でも人気のあるクラブにしたいと願っているのだ。クローゼの獲得と、彼の活躍は、ドイツにおけるラツィオの知名度を飛躍的に高めた。ドイツではもう何年もセリエAの放送がなかったのだが、今シーズンになって、クローゼが在籍するラツィオの試合だけが中継されている。ロティートはこの流れを継続し、拡大したいと思っているのだ。
ロティートは本田が“ラツィオの中田”になり、来シーズンのラツィオをスクデット争いを演じられるレベルにまで高めてほしいと願っている。同時に、ローマを訪れる数百万の日本人観光客が、オリンピコを観光名所のリストに加えることを目論んでいる。
商業主義と言うなかれ。単にスポンサー欲しさで日本人選手を獲得するならともかく、クラブのネームバリューを高め、スタジアムに多くの観衆を集めようというのは、サッカークラブの経営者とすれば至極真っ当な目標である。
今回、本田獲得の夢は1カ月で終わってしまった。だが、そのプロジェクトはすぐにまた動き出すだろう。
(記事提供:CALCiO2002)