3/1(木) 10:15
バンディエラとの決別〜アレッサンドロ・デル・ピエロ〜
好調をキープするユヴェントスにあって、その流れから置いてけぼりを食っている男がいる。
ユーヴェの象徴にしてキャプテン、アレッサンドロ・デル・ピエロだ。
アントニオ・コンテとアレックスの間には昔からの強い絆がある。そのため、昨年夏にコンテの監督就任が決まった時には、デル・ピエロが不動のレギュラーになると予想する声が多かった。
だが実際は違った。
現在のデル・ピエロは、スタメンでは使い道のない駒になってしまっている。
カンピオナート前半戦の18試合で彼がスタメン出場したのはわずか3試合。10試合が後半途中からの出場で、“パートタイム”としての役割がすっかり定着してしまった。
その理由は明らか。
コンテが導入した新布陣の犠牲になったのだ。
4-3-3、場合によっては4-1-4-1の現在のシステムでは、テクニックを持ち味にするセカンドアタッカーの居場所がない。
最前線には、単独で相手守備網を突破できる選手、ポスト役になって背後からの攻撃参加を引き出せる選手が求められる。つまり、典型的なセンターフォワードだ。
ファビオ・クアリアレッラが長期離脱していた間、この役割を務めたのはアレッサンドロ・マトリだった。
サイドアタック重視のコンテ・ユーヴェで、ウイングとして活路を見いだすという手もある。だが、コンテがサイドの選手に求めるのはスピードと運動量で、デル・ピエロの持ち味であるテクニックやファンタジーアは“贅沢品”でしかない。
試合展開や相手に応じて柔軟にシステムを変えるコンテのサッカーで、デル・ピエロが必要とされるのは、2トップになるオプションのみ。ただ、その場合にしても状況は良くない。1月のメルカートでマルコ・ボリエッロを獲得したのは、よりフィジカルの強いFWを求めているという証拠であり、デル・ピエロにとっては出場機会がますます減ることを意味する。
練習場でのデル・ピエロの動きにはキレがある。ユーヴェの番記者の多くがそう証言している。ただ、コンテは彼のプロフェッショナル精神を大いに称賛するだけで、スタメンに据えようとはしない。
我々は今、デル・ピエロの時代がすでに終わったと宣言しなければならないのかもしれない。昨年10月、アンドレア・アニェッリ会長は、ユーヴェの黄金時代建設に大きな貢献をしたデル・ピエロの契約更新を行わない意思を表明している。先日には改めて「デル・ピエロとは、前回の契約更新の時に『これで最後になる』ということで合意している」とコメント。「ボニペルティやプラティニと同じ、ユーヴェにとって絶対の存在だ」と語ったが、人々はこの言葉を「デル・ピエロを過去の選手と定義付けるものだ」と受け止めた。
チームが優勝争いを演じている時に「アレの時代の終わり」が表明されたことに憤慨する者は少なくない。先日はパオロ・マルディーニも「本人に直接ではなく、メディアを通して伝えるべきことじゃない。敬意を欠いている」と批判した。ただ、その一方で、「ユーヴェが新時代を築くためには、バンディエラとの決別が必要だ」と考える者もいる。
ベンチで戦況を眺めるデル・ピエロは、何を考えているのだろうか。彼自身は去就についてのコメントを避けている。一貫して「その話はしたくない。今は将来のことを考えることなく、このシーズンを最高の形で終えたい」と語っている。
気の早いファンは、「デル・ピエロの時代はすでに終わった」ことを受け入れ、現役続行の意思のある(と思われる)アレックスの次のチームへと思いを馳せている。日本のファンが気にしているであろうJリーグ入りの可能性だが、「高くはないがゼロではない」といったところ。
最近、イタリア人プレーヤーがJリーグでプレーした例はないが、アレックス自身は大の親日家で、東洋文化に大いに魅せられている。また、アルベルト・ザッケローニとの“縁”も彼の日本行きを後押しするかもしれない。
もっとも、デル・ピエロを長く見てきたサッカーファンの一人としては、「このシーズンを最高の形で終えたい」という彼の言葉が実現することを願わずにはいられない。彼はこれまで何度もキャリアの危機を迎え、そのたびに不死鳥のごとく復活を遂げてきた。今シーズンが本当にユーヴェにおけるラストシーズンだとしても、ただの“パートタイマー”で終わると決まったわけではないのだから。
(記事提供:CALCiO2002)