5/1(火) 11:00
アレックスの未来を考察する
アレッサンドロ・デル・ピエロは今シーズン限りでユヴェントスを去る。
それが本人の意思とは異なるとしても、クラブ首脳陣の決意は固い。
ミラン、インテルからゴールを奪ったことで、その去就への関心は再び高まった。
長年彼を取材し、個人的にも親交のある記者が、その“去就”を考察する。
■コンテは彼を必要としているがクラブに契約延長の意思はない
3月20日のコッパイタリア準決勝セカンドレグ、そして5日後のイタリア・ダービー。ミラン、インテルと続くビッグマッチ2連戦でのゴールにより、アレッサンドロ・デル・ピエロはストライカーとしての威信を取り戻した。
「彼のために時が止まった」。
そんな感覚に襲われたのは私だけではあるまい。
困難に満ちた数カ月を経て、デル・ピエロはようやく“完璧な1週間”にたどり着いた。信じがたいことだが、3月20日のミラン戦が、ユーヴェの偉大なカピターノにとって今シーズン公式戦で初めてのスタメン出場だった。そんな状況の中で、アレは見事に結果を出し、チームをコッパイタリア決勝に導いたのである。
決定的な仕事をしたのは25日のインテル戦も同じ。0-0の均衡が続いている場面で、ユーヴェのアントニオ・コンテ監督は、システムを変更するリスクを冒してまでデル・ピエロの投入にこだわった。それは、伝統あるイタリア・ダービーではデル・ピエロの経験と才能が必要不可欠であるとの判断だろう。そこで結果を出すところが、千両役者の面目躍如たるところ。
ゴール後、呆然とするインテルの選手たちを尻目に、アレックスは“舌を出すパフォーマンス”を見せてユヴェンティーニと歓喜を分かち合った。
新年を迎えてから、デル・ピエロのプレー時間は激減していた。継続的に出場はしていたが、そのほとんどが試合終了間際から。ファンからは常に拍手で迎えられるも、チームの勝利に貢献するような働きができていたわけではない。
デル・ピエロにスーパーサブ的な役割は向かない。彼の場合、少なくとも30分はプレーする
必要がある。そうでなければ、むしろ使わないほうがいい。
彼が持つリーダーシップとカリスマ性、豊富な経験値も、試合終盤の数分間では発揮のしようがない。長くピッチに立ってこそ、その才能は際立つのだ。
試合の流れを読み取り、それをコントロールし、相手との意図の探り合いの中から決定的なプレーに達する道筋を見いだす──それがデル・ピエロの流儀であり、アタッカーとしてのスタイルなのだ。
ある意味では当然と言えるが、ミランとインテルを相手に立て続けにゴールを奪った後、彼
の来シーズン以降の去就についての議論は再び沸騰した。
「この活躍でユーヴェとの契約延長が電撃的に決まるのではないか」と騒ぎ出した者もいる。ユヴェンティーニの大多数はデル・ピエロの残留を願っている。彼らは2つのゴールに希望を見いだそうとしたのだろう。
しかし、私自身はデル・ピエロとユーヴェ周辺の取材から、契約延長の可能性は限りなくゼロに近いと考えている。両者の別れはすでに決定事項なのだ。
5月20日、ローマのスタディオ・オリンピコで行われるコッパイタリア決勝(相手はナポリ)が、デル・ピエロのユーヴェにおける最後の試合になる。この日の夜、イタリア最大の名門クラブと一人の偉大なるプレーヤーがつむぎ上げたストーリーは終わりを迎えるのだ。もしデル・ピエロがこの試合で決勝ゴールを決めても、いや、そこまでの全試合でゴールを決めたとしても、ユーヴェとの契約が更新されることはないというのが、私の個人的な見解である。
なぜなら、アンドレア・アニェッリ会長の「デル・ピエロ抜きで若手中心の新しいチームを再構築する」という信念は我々が思う以上に強固なものだからだ。今シーズン終了後、デル・ピエロがユーヴェの「生ける伝説」から「過去の伝説」に移行する可能性は極めて高い。人々は、「ラブストーリーにはラストでのどんでん返しが付き物」との淡い期待を抱くだろうが、何度でも言う。今回に限ってその確率は低い。
ナポリ戦の後、“老貴婦人”はデル・ピエロと抱擁を交わし、長年の献身に心から感謝の意を述べるだろう。ただ、その後の彼女は、新しい挑戦へと向かう10番の背中を無言で見送るはずだ。
彼女の口から慰留の言葉が出ることはない。
(記事提供:CALCiO2002)