7/1(日) 11:00
MADE in JAPAN [Ryo Miyaichi]

Photo:足立雅史
キレのあるドリブルでボルトンのサポーターを沸かせた宮市亮だが、シーズン終盤には相手のラフプレーに苦しめられることとなった。
来シーズンに向け、彼には2つの道がある。
アーセナル復帰か、3度目のローン移籍か--。
宮市は今、キャリア序盤の大きな岐路に立っている
この数年、若き日本のサムライたちがヨーロッパで才能を発揮し、自分の居場所を切り開いている。
チームに日々密着する現地記者は、彼らをどう見ているのだろうか。
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■準備不足と判断されれば再度のローン移籍もある
宮市亮はこれからどうなるのか?
世界屈指の魅力的な若手とたたえられる一方で、ボルトンの残留失敗によって、《日本代表の未来》の去就は不透明なものとなっている。
今シーズンの後半戦、宮市は所属するアーセナルからローン移籍でボルトンに加入。プレミアリーグで先発8試合を含む12試合に出場し、2つのアシストを記録するなど随所で輝きを見せた。しかし、肩の故障や調子の低下もあり、シーズン最終盤にはレギュラーの座を失った。
この夏にはアーセナルへ戻る予定だが、問題はアーセン・ヴェンゲル監督のトップチーム構想に入れるかどうか。
もしそうでない場合、再び荷物をまとめて他のクラブへローン移籍に出されることになる。
■アーセナルに戻っても定位置確保は難しい
宮市本人は、自分がアーセナルのレギュラーにふさわしいことを証明したいと願っていることだろう。そのためには自らの実力を認めさせなければならないが、ウイングのポジションにはセオ・ウォルコットとアレックス・チェンバレンのイングランド代表コンビが立ちはだかっている。
アーセナルにはこの2人の他にもジェルヴィーニョやヨッシ・ベナユンといった優秀なアタッカーがいる。宮市と同様にレンタルに出されていたアンドレイ・アルシャヴィンなども含めれば、ライバルはかなりの数となる。
ヴェンゲルは若手育成に積極的なことで知られる監督だが、だからと言って登録選手全員に平等な出場機会を与えるわけではない。
ヴェンゲルの起用法にはメリハリがある。
その目に「使える」と映れば、10代だろうが実績不足だろうが迷うことなくピッチに送り出す。しかし、「まだ準備ができていない」と判断されたら……。
ボルトンでの宮市は、テクニックと積極性でオーウェン・コイル監督を始め、チームスタッフや選手、サポーターから称賛を集めていた。実際、リーボック・スタジアムでは、最終盤に失速するまで、充分なインパクトを見せてチームのアイドル的存在になっていた。
それでも、アーセナルにはボルトンとは比較にならないほど才能が溢れ、しかも完成度の高い選手が複数いる。現状を見る限り、宮市がいきなりトップチームに入ってレギュラー、もしくはそれに準ずる地位に定着するのは相当難しいだろう。
アーセナルでのトップチーム入りはいばらの道になりそうだが、ヴェンゲルを支えるチームスタッフは19歳の日本代表を評価しており、長期的な投資に値するだけの潜在能力を持った選手だと確信している。
「リョウはイングランドへ来て、ここまで本当によくやっている」と話すのは、アーセナルのトップチームでコーチを務めるニール・バンフィールド。
「私たちの高い要求に苦しんだ時期もあったが、懸命に努力して戦っていたのが、いかにもリョウらしかった。トップチームの練習に参加し、その後ローンでボルトンへ行ったが、そこでもよくやっていた」
しかし、そんなバンフィールドも、宮市がアーセナルでレギュラーに定着する可能性について尋ねられると「それはヴェンゲル監督が決めることだ」と言葉を濁した。
若手の育成に力を入れるヴェンゲルは、キャリアの序盤で若手に過度なプレッシャーを掛けないよう細心の注意を払うタイプの監督である。そうした背景もあって、バンフィールドは宮市が新シーズンもローン先でプレーする可能性を排除しなかった。実際、その選択肢について、クラブはシーズン終了後もボルトンと話し合いを続けていると言われている。
「夏にはスタッフが集まって、すべての若手について新たなプランを立てる。リョウをアーセナルに残すか、それとももう一度ローンに出すかは監督が決めることだ。アーセナルでプレーする準備が整っていないと判断されれば、再度のローン移籍もある」
このように説明したバンフィールドだが、宮市のことを知りたがる我々と日本の読者のために「ボルトンでのパフォーマンスは高く評価している」とフォローすることも忘れなかった。
(記事提供:ワールドサッカーキング)