ジョージ・クリテコズ市長が、「シュガーサンド」と胸を張る真っ白な砂浜で、スタイル抜群のオネーチャンやイカツイあんちゃん、はたまた家族連れ、老いても仲睦まじいジーサンとバーサンがビーサンを履いて日光浴を楽しんでいる。
世界最大のスポーツの祭典が迫ろうが、ビーチサッカーよりもビーチパラソルが似合うリゾート地ではそんなことお構いなし。老若男女が思うままに時間を過ごし、「わーるどかっぷぅ〜?」な雰囲気が漂っている。
それもそのはず、ここはサッカー不毛の地と言われて久しいアメリカ。市長曰く、「フロリダ州で最高のビーチ」を有する国内屈指のリゾート地であるクリアウォーター。もちろん、サッカー界のビッグイベントが間近となる中では、バカンスばかりというわけにはいかず。当地では、ブラジル・ワールドカップに臨む日本代表の直前合宿が行われている。
日本代表を率いるザック監督は、「レシフェやナタルの気候に合わせた暑熱対策」ということで直前合宿地にクリアウォーターを選んだとのことだが、メキシコ湾に面して気候が温暖なところから効果もバッチリな感じ。周囲の人々も、日本代表には我関せずといった様子でバカンスを楽しんでいる。地上の楽園を横目に、散歩がギリギリという何ともストイックな生活を強いられている選手達はちと可哀想だが、大舞台に臨むための総仕上げとしては打ってつけのロケーションと言えそうだ。あとは我慢を発散するかのようにワールドカップで結果を残して、「みなさんが改めてここに戻ってくることを信じています。ワールドカップのトロフィーとともに」という市長のウェルカムメッセージ通り、大会後にしっかりと楽しんでもらえることを願うばかりか。
サッカーとは縁もゆかりもなさそうな当地で、「ワールドカップッ!」な雰囲気を探すとなれば、大会公式スポンサーを務めるコカ・コーラとマクドナルドの商品に入っている大会ロゴぐらいのもの。全世界共通のパッケージだろと突っ込まれればそれまでだが、市長が「アメリカで一番素敵なサンセット」と自負するビーチで喉を潤すコーラの味は、どこかいつもと違う。
ちなみに、タンパ合宿と言われるが、タンパとクリアウォーターはオールドタンパ湾を挟んだ位置関係。車をブーンと飛ばせば40分ほどで向かえるが、路線バスを使うと結構な長旅となる。タンパのダウンタウンにある2500円のユースホステルに投宿している我が身にとっては、合宿地に行くにも一苦労。片道3時間かけて辿り着いた末に飲んだコーラは、やっぱりどこかいつもと違う。何だかほろ苦いゼ。
【プロフィール】
小谷紘友(おたに・こうすけ)
1987年、千葉県生まれ。学生時代から筆を執り、この1年間は日本代表の密着取材を続けてきた。尊敬する人物は、アルゼンチンのユースホステルで偶然出会ったカメラマンの六川則夫氏。