日本代表がグループリーグ最終節を戦った地は、クイアバ。南米大陸のちょうどど真ん中に位置し、隣はボリビアというブラジル西部に位置している。人口は70万人以上。大自然が残る北部パンタナールやギマラインス高原国立公園への観光拠点にもなっている大都市だ。
ところが、何と言ってもアクセスが悪い。首都ブラジリアや南米最大都市のサンパウロをはじめとするブラジル各地から空路が通じているが、今はワールドカップが絶賛開催中。各国サポーターが大挙してやってくるため、航空券を取るにも一苦労だ。
追い打ちをかけるように、ホテルが圧倒的に少ない。観光都市とは言うものの、実際は観光客に優しくないところが実態か。とは言え、そんな過酷な環境を知ってか知らずか、空港にはファンゾーンなる場所が設置されている。もしかしたら見落としていただけという可能性もあるが、これまでの日本代表戦が行われたレシフェやナタルの空港にはなく、サンパウロにも設置されていなかった。
このファンゾーンのありがたいところは、何と言っても24時間オープンな点。インターネットに接続可能なことは言うも及ばずで、大きなテレビ画面で各試合も視聴可能となっている。その上、遊び道具もアナログとデジタル両面で充実。人形のついた棒を手で動かすテーブルフットボールとPS4のサッカーゲームも置かれて、フライトまでの空き時間には持ってこいの環境だ。
さらに嬉しいのは、マットやクッションが用意されていて、仮眠が可能なところ。深夜発着の便でも不安はなく、午後6時キックオフだったナイジェリア対ボスニア・ヘルツェゴビナの試合後はもちろん、午後4時開始だった日本とコロンビアの一戦の後も、多くの各国サポーターがファンゾーンに訪れていた。
とは言え、全ては自己責任。仮眠ができるスペースがあるだけで、シャワーは当然、ロッカーも置かれていない。みんなスマホやパソコンをいじっているが、誰でも往来可能なだけにセキュリティは保証できない。それなのに、それぞれがマットに、地面に横たわり、思い思いの格好で時間を過ぎるのを待っている。
冷静に見ればなかなかカオスな光景である。ただ、コロンビア戦前後で2度夜を明かしたが、幸い盗難に遭わなかったことで、一安心。いよいよ雑になってきたということか。次なる場所は、クイアバから約4000キロ離れた北東部のフォルタレーザ。人口約250万人を誇り、《ブラジルのアテネ》とも呼ばれる大都会には、さすがにファンゾーンはないかも。
【プロフィール】
小谷紘友(おたに・こうすけ)
1987年、千葉県生まれ。学生時代から筆を執り、この1年間は日本代表の密着取材を続けてきた。尊敬する人物は、アルゼンチンのユースホステルで偶然出会ったカメラマンの六川則夫氏。